2021/03/29

彼が衣替えしていた。

夏用のパジャマだな、と、思って過ごしていた。

ふと見ると、どう考えてもブラジャーで引っ掛けて空いた穴がある。前の妻と暮らしていた時につけた物なのだろう。

思わず笑って「ブラジャーはネットに入れて洗濯をしないと、こう言う形の穴が開くんだよ。かつて1番愛した奥さんの物だね」と指摘して、しばらく転がってラジオを聞いたけれどどうしようも無く落ち込んでしまい、落ち着こうとすぐ寝室からリビングに逃げてしまった。

我ながら、本当に頭が悪い。自分の発言に落ち込むなら、言わなければいいのに。

彼の穴の空いたパジャマとくっつくのはどうしても嫌だから、彼が眠るまで別室にいよう。

お茶を入れて、開き直って、ラジオを聞きながら笑った拍子にパジャマを脱いだ彼が寝室から出てきて、パジャマをゴミ箱に捨てた。

唖然としてしまい、いいのに、と、声をかけたけれど「気を悪くさせたね、ごめんね」と言われた。私は、いいのに、と繰り返した。

やさしい。

落ち込んだ。

全く責めたてたり落ち込ませたいいわけではなかったのに、どうしてこうなるんだろう。

ありがとうとか、ごめんなさいが、とっさに出ない自分のことも嫌いだと思った。